他人のモチベーションアップの秘訣は「関係ある」と思わせる

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周りの人がついてこない、モチベーションが低いという問題の原因はメンバーが「関係ない」と思っているからかもしれません。

「関係ない」というのは、組織にとって自分が重要ではない、組織の目的達成のために自分はいなくても平気と思っている状態のことです。

全員のモチベーションが高い組織というのは、あらゆる人たちが組織の問題や挑戦について「自分にも関係がある」と感じています。

今回は他人のモチベーションアップという視点から、いかに「関係ある」と思わせることが大切なのかを説明していきましょう。

第94回全国高校サッカー選手権優勝の東福岡

2016年1月11日に行われた第94回全国高校サッカー選手権決勝で東福岡高校が優勝しました。

それに関連して、東福岡高校のサッカー部がいかに優れた組織であるのかを紹介している記事があります。

参照:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160112-00000108-spnannex-socc

  • 通常、強豪校では、試合に出られる見込みがなければ退部者が相次ぐもの。だが“ヒガシ”の部員は辞めない。
  • 部員は実力別にA、B、C…という各グループに分類される。1チーム約30人。基本的に週に1度、チャレンジマッチが行われ、入れ替えは頻繁だ。しかも、17人のスタッフがおり、各チームにはきちっと指導者も付く。
  • 30人×4の120人に試合出場の可能性がある。手を伸ばせばすぐチャンスをつかむことができるのだ。

上記の文章から、東福岡高校サッカー部は強豪校でありながら退部者が少なく、多くの部員のモチベーションが高いことがわかります。

また例えば技術的に劣る選手であっても、指導者の指導が受けられ、試合に出場する機会があるのです。

そして、努力をして技術を向上することができれば、どんどん上のグループへと登っていけるという機会がかなり多く与えられていることもわかるでしょう。

監督として97、98年に連覇を達成した志波芳則総監督(65)は「いつも見られているから“俺たちは関係ねえ”ということにならない」という。

こうした部活での慣行は、部員たちに「自分たちは関係ある」「自分たちは部活動に必要な存在である」という意識をもたらしてくれます。

モチベーションと「関係ある」

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無言で「関係ない」というメッセージを発してしまう

メンバーのモチベーションが低いときの一因として、メンバーが「自分は関係ない」と思っていることがあげられます。

しかし、当然ながら組織の人たちがメンバーに向かって直接「お前は関係ない」と言っているわけではありません

組織の上の階層にいる人たちの行動や組織の慣行によって「ああ、自分は関係がないんだな」と思わせられることがほとんどなのです。

  • 大事な決定を自分には相談されず、知らない間に決まってしまっている
  • 重要人物との飲み会に自分は誘われない
  • 自分の努力を見てくれていない、能力を高めるためになにかしてくれるわけでもない
  • レギュラーやそれに近い選手ばかり注目され、発展途上の選手やマネージャーは注目されない
  • 直接利益を生み出す部署のみが優遇され、それを助ける部署はなかなか評価されない

上記のような行動をされていると「ああ、自分は組織にとってそれほど必要ではないんだな」「関係ないんだな」と感じてしまうのではないでしょうか。

こうした行動は意識的に行っていることよりも、無意識のうちに行われていたり、組織の文化として根付いていることが多いものです

関係ないと考えるようになった時点で、モチベーションを維持することは非常に難しくなるでしょう。

関係あると思わせるにはどうするか

関係あると思わせるためには、関与することがすべてだといえるでしょう。しかも一部ではなく、限りなく全員に関与することです。

東福岡高校サッカー部は17人のスタッフがおり、多くの部員が指導者の指導を受けることができます。他にもあらゆる部員に様々な機会があるのです。

 
他の強豪校によっては、監督に名前を覚えてもらうのも一苦労で、わざと監督の見えるところで練習をしてアピールするのだとか。

「覚えてもらいたい」というモチベーションにつながるともいえますが、それでも全員が覚えてもらえたり、指導をしっかりと受けられるとうわけではありません。

 
それよりもあらゆる選手をしっかり指導することで「自分は必要とされている」「チームは自分の能力を高めたいと思っている」と感じることのほうが効果は大きいでしょう。

普段の組織のなかでも、常に話しかけたり、意見を聞くと言うことはメンバーを尊重している証であり、「自分は関係あるんだ」と思わせる要因になります。

関与を限定的にしてはいけない

ただしこの関与を限定的にすると、よく見かけるモチベーションが人によって大きく異なる組織になってしまうでしょう。

限定的な関与は自分のステータスを高め、自分は特別であるということを示すために行われてしまうことが多々あります。「この情報を知っているのは私たちだけ」「この機会を得られるのは自分だけ」という具合です。

しかし、気に入った人だけと話す、一部の人だけに指導するという行動こそが「自分には関係ないな」と思わせる要因なのです。

関与を限定的にせず、できる限り全員と関与する。これが他人に「自分を関係ある」と考えさえ、モチベーションアップさせる秘訣だといえます。

人はみんな自分が特別だと思っている

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たいていの人間は、自分が他人とは違うことをしているとか、自分は掛け替えのない人間だと思っていたいものだ。*1

上記の一文はぼくがよく引用するものです。ほとんどの人間は自分がかけがえのない存在であると信じています。

確かに全員が必要不可欠な存在で、一人が欠けたら組織はなりたたないという状態は非現実的でしょう。しかしながら、一方で人は自分がそうした存在でありたいと願っているのです。

全員に関与するなんて無茶だとか、能力が劣っている人にまで関与する必要はないと考えている方は、こうした人間の基本的な考え方にも注目する必要があるでしょう。

 
さらにいえば、「およそ8割の社員が自分の働きを平均以上だと信じている*2」という調査結果があります。

つまり平均以下の働きしかしていない人間のなかには、自分の働きが平均以上だと信じている人がたくさんいるということです。

この人は優れた働きをしていないから、あんまり関与しなくてもいいだろうという行動が、その人のモチベーションを大きく下げるであろうことは想像に難くないでしょう。

だからこそ、できる限り全員に関与することが重要で、それがモチベーションアップにつながるのです。

 
こうした話は様々な議論がつきもので、「そもそも人はできる限りサボりたかるのだから、関与を望まない人だっている」という意見もあるでしょう。

しかしながら、今回の選手権で優勝した東福岡高校サッカー部*3「全員が関係ある」と思えるような組織運営は一つの答えであることは間違いありません。

というわけで、他人のモチベーションアップのためには、全員に関与し、「自分に関係ある」と思わせるべきであるという話でした。

*1:チャールズ・オライリー、ジェフリー・フェファー(2002)『隠れた人材価値』翔泳社

*2:デビット・シロタ他(2006)『熱狂する社員』英治出版株式会社 p.83

*3:市立船橋との試合はすごかったですね。市船は地元なのでめっちゃ応援していました。延長戦があればなと……。

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